ノラと皇女と野良猫ハートのスタッフが全年齢で仕掛けてきた「カートゥーンアドベンチャー」。
起動した瞬間、「これギャルゲー?」って思う。
そう思ったまま6時間で全クリしてしまった。
面白い。面白いんだけど、もうちょっとゆっくり味わいたかった。
そういう作品だった。
※FANZA DL版(PC)でプレイ。全クリ済み。
⚠️ この記事には『マルコと銀河竜』の中程度のネタバレが含まれます。核心的な結末には触れませんが、作品の展開・キャラクターの関係性には言及しています。未プレイの方はご注意ください。
作品情報

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | マルコと銀河竜 ~MARCO & GALAXY DRAGON~ |
| ブランド | TOKYOTOON(HARUKAZEの全年齢レーベル) |
| 発売日 | 2020年2月28日(パッケージ版・Steam版同時発売) |
| DL版配信日 | 2020年6月26日(FANZA) |
| 対応OS / プラットフォーム | Windows 8.1/10/11、Steam、Nintendo Switch |
| ゲームジャンル | カートゥーンアドベンチャー |
| ジャンルタグ | 全年齢・SF・コメディ・女性主人公・一本道 |
| 原画 | 大空樹(キャラクターデザイン)ほか多数 |
| シナリオ | はと(十鳩) |
| 音楽 | 森リーモ慎之介、RE-D、ぽみ、斎藤優輝 |
| ボイス | フルボイス |
| 声優 | マルコ:井澤詩織 / アルコ:吉田有里 / ハクア:石見舞菜香 / ガルグイユ・シーラ:田村睦心 / 恩田桜子:大地葉 / 恩田游子:引坂理絵 / 瑠璃:ファイルーズあい / テラ:内山夕実 / ラッカ:鈴代紗弓 / 黒崎鷹緒:大森日雅 / パンダグラフ:種﨑敦美 / 市長:春野杏 / 非常食:田中貴子 / 原:野津山幸宏 / アスタロト:斉藤次郎 / エル・スケルトン:山下大毅 |
| レーティング | 全年齢 |
| 価格 | FANZA DL版通常7,800円(税抜)/ Steam版あり / Switch版あり |
| 受賞歴 | 萌えゲーアワード2020 イノベーション賞 |
| 購入リンク | FANZA GAMES / Steam / 公式サイト |
あらすじ
10年前、人さらいに遭って奴隷として売られた孤児の少女・マルコ。
ブラックホールから生まれた銀河竜・アルコと相棒を組み、トレジャーハンターとして銀河を駆け巡る日々を送っている。
ある日、手に入れた希少な宝石「トカゲ石」を売りさばくため、そしてマルコの宝もの――まだ見ぬ母親を探すため、二人は地球の金紐市(ゴールドコード)へ降り立つ。
待ち受けるのは、トカゲ石を狙う銀河の支配者アスタロト、個性が爆発した地元のキャラクターたち、そしてマルコ自身の記憶に関わる真実だった。
これギャルゲーなの?って最初に思った

起動して最初のカートゥーンが流れた瞬間に「ジャンルが違う」と感じた。
アメリカのトゥーンアニメみたいな頭身のキャラが画面を走り回って、爆発して、叫んで。
ノベルゲームを想像して買ったのに、始まったのはアニメだった。
しかもただのオープニングムービーじゃなくて、本編の要所要所にこのカートゥーンが挟まるんだよね。
アクションシーンや逃走劇のたびにアニメパートに切り替わるから、体験としてノベルゲームの枠からはみ出してる。
制作はTOKYOTOON。
企画・脚本のはと、キャラデザの大空樹――ノラと皇女と野良猫ハートのコンビがそのまま全年齢に挑んだ作品だ。
Steamでは「圧倒的に好評」で、海外――特に中国語圏からの支持がかなり厚い。
国内と海外で評価の肌感覚がだいぶ違うのも、この作品の面白いところだと思う。
CG1000枚の暴力――立ち絵じゃなくてスチルで会話が進む

この作品で一番驚いたのは、立ち絵が少ないこと。
普通のノベルゲームなら会話シーンは立ち絵+テキストウィンドウで進むところを、本作はほぼ全編イベントCGの連続で展開する。
会話のたびにカットが切り替わって、まるでアニメのカット割りを見てるような感覚になる。
公式が謳うCG・スチル1,000枚以上という数字は伊達じゃない。
回想シーンの枠数は差分込みで2,000近くあるらしいから、常軌を逸した物量だ。
この物量が生む没入感は半端ない。
オートモードで流していると、6時間ぶっ通しで画面に釘付けのまま気づいたらエンディングだった。
スチル連打でシーンが勝手に流れていくから、テキストを追いかける意識が薄くなって、映像体験に近づく。
ただ、逆に「ここは立ち絵でよくない?」と思う場面もなくはないし、一枚絵のクオリティが高いぶん次々流れていくのがもったいないとも感じた。
贅沢な悩みなんだけど。
声優陣がアニメのそれ

キャスト一覧を見た瞬間、「これゲームのキャスティングか?」と思った。
田村睦心、ファイルーズあい、種﨑敦美、石見舞菜香、内山夕実、鈴代紗弓。
アニメでメイン級を張る声優がずらっと並んでる。
井澤詩織のマルコも、吉田有里のアルコも、声を聞いた瞬間にキャラが立つ。
特にガルグイユ・シーラの田村睦心。
声を聞いた瞬間「この声めっちゃ聞いたことある」って思って、調べたら小林さんちのメイドラゴンの小林さんだった。
フルボイスの恩恵がでかい作品で、掛け合いのリズムがそのままアニメの会話劇に近い形になってる。
はと全開の疾走感――テンポ、ミニゲーム、音楽

シリーズ作品をやった人なら5分で「あー、はとの作品だな」ってわかるノリ。
カットインがバシバシ入って、BGMが盛り上がって、キャラがボケて突っ込んで。
展開が異様に速い。
シリアスな場面のはずなのに急にギャグが入ったり、ギャグのはずなのに急に泣かせにきたり。
この畳みかけがあるからスチル1,000枚の物量が活きるし、6時間という短いプレイ時間でも密度の濃い体験ができる。
開始1時間で「あ、これ面白いやつだ」って確信できるスタートダッシュの速さも良い。
ミニゲームもこのドライブ感の一部で、突然シューティングが始まったり、0.3秒で反応を求められる謎のゲームが挟まったり。
WASD移動じゃないのが地味にビビったけど、シリーズ過去作のミニゲームよりは簡単だった。
音楽もかなりいい。
OP「飢餓と宝玉」がとにかくいい。エンドロールでの入り方が最高だった。
挿入歌も充実してて、クラシックあり、ジャズあり、ボーカルあり、8bit風ありと幅が広い。
BGMの種類も短い作品の割にやたら豊富で、場面ごとの空気を変えるのにしっかり貢献してる。
ただし、「良くも悪くも」の「悪くも」がここから先の話に繋がる。
言葉が足りない、時間が足りない――この作品で一番引っかかったところ

本作のテキストには詩的な表現が多い。
感情を直接言葉にせず、曖昧で余韻のある言い回しで伝えようとする。
それ自体は悪くないし、むしろ好きなタイプの表現ではあるんだけど。
問題は、その詩的な表現と疾走するテンポの相性がまあ悪いこと。
そもそも本作は地の文が少ない。
ナレーション以外は体感で9割以上がセリフで構成されていて、キャラの内面を描写する地の文がほぼ存在しない。
だからセリフの中に込められた詩的な表現だけで、感情も情景も全部担わないといけない。
なのに展開が速いから、考えさせられるフレーズが出てきても次の瞬間には画面が切り替わって別の場面に移ってる。
「今のセリフ、もうちょっと噛みしめたかったんだけど」と思う暇もなく話が進む。
マルコとアルコの関係性。
アスタロトとの対立。
マルコの母探しと記憶の問題。
どれも掘り下げたら面白い素材なのに、全部駆け足で通り過ぎていく。
恩田姉妹、黒崎、市長、パンダグラフあたりも「もっと見たい」のに出番が足りない。
短い尺に詰め込みすぎて、賑やかし要員になってしまっているキャラがいるのは惜しかった。
あと、シリアスとギャグの切り替え。
このライターの持ち味ではあるけど、感情が乗ってきたところで急にギャグに切り替わると「今の気持ちどうしてくれるの」ってなる場面がいくつかあった。
あと2〜3時間あればサブキャラのエピソードが成立して、緩急のメリハリももっと効いたんじゃないかと思う。
結末も、このチームらしい着地だなという感想。
きれいにまとまってはいるんだけど、「え、ここで終わり?」という唐突さはある。
DL版7,800円(税抜)に対してプレイ時間6時間。
グラフィック枚数やカートゥーンの制作コストを考えれば開発費はかかってるのはわかるけど、テキストを追いかける側からすると「あと一幕ほしかった」という気持ちが残った。
ノラととDNAを感じる瞬間たち

プレイしてて何度も「このブランドの作品だな」と思った瞬間があった。
まずマルコの顔。ノラっぽい。
三白眼気味のデザインに、シナリオライター特有のサバサバした口調。
大空樹のキャラデザとライターの脚本、この組み合わせの「顔」がある。
テラ・イセザキはノラとと2のアイリスと雰囲気が似てる。
これは完全に個人の印象なんだけど、金持ちかどうかは別として、アホで勢いで喋ってる感じがそっくり。
TOKYOTOONのキャラには「テンションで場を支配する枠」みたいなフォーマットがあるのかもしれない。
キャラデザ、話のまとめ方、掛け合いのノリ。
前作シリーズが好きな人なら確実に刺さるし、逆にあのノリが合わなかった人は本作も厳しいと思う。
ただ、個人的にはノラとと1よりも明らかにテンポが速い。
ノラとと1はテンポが速すぎず遅すぎずで、シリーズの中で一番バランスのいいゲームだった。
ノラとと2の時点で既に勢いと曖昧な表現の衝突やキャラ間の出来の差が目立ってたんだけど、本作はそこからさらにアクセルを踏んだ感じ。
はと脚本の「突っ走る」傾向がシリーズを追うごとに強くなってるのかもしれない。
まとめ――スチル1,000枚の没入感と、言葉の足りなさが表裏一体の作品

良かった点:
- スチル1,000枚超+カートゥーンによる圧倒的な没入感。オートモードで流すと6時間があっという間
- アニメ級の声優陣によるフルボイスの掛け合い。田村睦心、種﨑敦美、ファイルーズあいが揃ってるキャスティングはゲームの域を超えてる
- OP「飢餓と宝玉」をはじめとする音楽の質の高さ。短い作品とは思えないほどBGMもボーカル曲も充実してる
- このスタッフらしいテンションとキャラの魅力。個性の塊みたいなキャラたちの掛け合いは見てるだけで楽しい
- ノベルゲームの枠を壊しにいった挑戦そのもの。萌えゲーアワード2020イノベーション賞も納得の出来
気になった点:
- 地の文がほぼなく、詩的なセリフだけで感情を担っているのに疾走テンポで流れていく。噛みしめる余裕がない
- DL版7,800円に対してプレイ時間6時間。グラフィック制作コストを考えれば妥当かもしれないが、テキスト量としては物足りない
- シリアスとギャグの切り替えが唐突な場面あり。サブキャラの掘り下げも不足気味
こんな人におすすめ:
演出重視で、短時間に濃い体験をしたい人。
シリーズ作品やはと脚本が好きな人。ノベルゲームに新しい体験を求めてる人。
向かないかもしれない人:
テキストをじっくり読み込みたい人。キャラの内面描写を重視する人。
このライターのギャグとシリアスの混在が合わない人。
スチル1,000枚の没入感と、言葉の足りなさ。
この二つが表裏一体になってるのが本作だと思う。
片方だけでは成立しない。片方だけを切り取って評価しても本質を見誤る。
それでも、プレイして損はしない。
6時間後に「面白かったけど、もっと欲しかった」と思えること自体が、この作品の力だから。








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